中国古典に学ぶ「世界最高のリーダー論」

座右の書『貞観政要』~中国古典に学ぶ「世界最高のリーダー論」出口治明・著(KADOKAWA)から読んでみたいと思います。

—(抜粋ここから)
◎組織はリーダーの器以上のことは何一つできない
有限の「器」の大きさしか持てない生身の人間にできることは、自らの器を捨てる、あるいは必死に消すことしかない。人の能力も時間も有限である以上、他人に任せる以外に組織を強くする方法はない。

◎自分に都合の悪いことを言ってくれる部下をそばに置く
部下の諫言(かんげん=苦言)を受け入れる努力を常に怠らないようにしないと、裸の王様となり、自分の本当の姿が見えなくなってしまう。

◎リーダーは部下に支えられる”寄生階級”である
人民が生産階級だとすれば、君主は人民に頼るしかない寄生階級である。

◎「何もしないリーダー」を理想と考えよ
何もしなくても組織が成り立つのは、適材適所に人を配置できている証拠である。

◎上司の機能は「人をまとめる」「方向を示す」役割
上司も部下も組織を運営するための機能のひとつに過ぎない。チームで仕事を回すために、上司はたまたま上司の機能を割り当てられただけである。上司は部下よりも人間として偉いわけではまったくない。

◎リーダーは「オールマイティではない」ことを強く自覚する
強い組織をつくるには、上司も部下も君主も人民も、与えられた役割に注力すべきである。人間にはそれぞれ、組織上、仕事上の本分がある。自分の本分でないことには手を出すべきではない。特にリーダーは「権限を与えたら、あとから取り戻すことはできない」「上司といえども、部下の権限を代行することはできない」という権限の感覚を身につけることが重要。

上に立つ人には、自分がやるべき仕事の範囲を把握する能力が必要。これも重要な権限・秩序の感覚である。自分の職務(機能)に関係があるものとないものの範囲を正しく理解して、関係がないことは聞かない。見ない。そして、口に出さない。それが、部下を伸び伸びと働かせ、かつリーダーが心身の健康を保つ最善策だ。

◎相手を選ばない
リーダーの大事な仕事のひとつは「事情がわからない中で右か左かの判断を迫られること」。そのときのためにも情報はたくさんあったほうがいい。だからリーダーは相手を選ばずに人の話に耳を傾けるべきだ。リーダーは、情実や好き嫌いで話を聞く相手を選んではいけない。相性の悪い人、嫌いな人、厳しいことをいう人の意見にこそ耳を傾け、それを正面から受け止める姿勢が求められている。

◎「3つの鏡」を大切にする
1.銅(実物)の鏡:部下が自然についてきてくれるような”いい表情”を作れているか。
2.歴史の鏡:将来に備えるための教材は、歴史(過去)しかない。
3.人の鏡:耳の痛いことをいってくれる人がいなければ、裸の王様になる。

◎リーダーが正しい意思決定を行うために
厳しい直言をしてくれる人をそばに置き、鏡とすべき。もしダメ出しをしてくれる人がすでに周りにいるのなら、「イヤな奴だ」と思わずに、むしろ喜ぶべきだろう。だが、少しくらいの悪口なら平気でも、悪口をいわれ続けると、人間やはり腹も立つ。打たれ続ける覚悟が持てない場合は、側近のバランスを考える。側近を5人にするなら、「3人は茶坊主でいいけれど、残りの2人は自分を嫌っている人間(あるいは、反対勢力の人間)から選ぶ」などの工夫をしたほうがいい。

◎たっぷり食べて、たっぷり寝る
上司になって最初にやらなければいけないことは、たっぷり食べて、たっぷり寝ることだ。そして、不愉快なことが起こったときには、仲のいい友だちと酒を飲んで、上司や職場の悪口をめいっぱいいって、スッキリさせる。そして翌朝の職場には負の感情を持ち込まない。心身ともに自分をコントロールできなかったら、絶対にいい仕事はできない。

◎悪く書かれないようにするために
太宗は「史官(歴史の編さんや文書の記録をする役人)が私のことを悪く書かないことを望む」と自分の気持ちを正直に告白している。太宗は自分が簒奪(さんだつ)者(君主の地位を奪い取った人)であり、マイナスからスタートしていることを自覚していた。そして太宗は、悪く書かれないようにするために、3つのことを実践していると述べている。

1.過去の皇帝の失敗から学ぶこと
2.善良な人や行いの正しい人とともに、道義的に正しい道を歩むこと
3.取るに足らない人たちは退けて、嘘、告げ口、悪口は聞かないこと

◎上に立つ人の言葉は「思っているよりはるかに重い」
上の人が何気なくいった言葉であっても、下の者は深刻に受け止める。皇帝のように絶対的な権力を持つ人の場合、その発言は法律とほぼ同じになるので、言葉を選び、よく考え、慎重に発言しなければならない。また、いくら口がうまくても、人格が備わっていなければ、部下の信頼は得られない。常に言行一致を心がけていないと、部下はついてきてくれないということだ。

トップの話す言葉が非常によく考えられていて、大所高所から物事を判断できる。悠揚(ゆうよう)迫らぬ鷹揚(おうよう)な人柄で、誰からも好感を持たれる。「ああ、この人にやっぱり上に立ってほしいなぁ」「この人は立派な人だなぁ」「この人のいうことなら、聞くしかないなぁ」と思ってもらえる徳を持つ。そういう人物でなければ、上に立つことは難しく、仮に上に立ったとしても部下は喜んでついてはこないだろう。

◎人格は濁ってはいけない。しかし、輝くほど澄んでもいけない
相手が善人でも悪人でも、分け隔てなく受け入れる度量を持つことを一般に「清濁併せ呑む」というが、『貞観政要』の中でも、リーダーは清濁併せ呑む人物でなければならないことが示唆されている。

「天子は、その人格がドロドロとして濁っていてはいけない。かといって、輝くほど澄んでいてもいけない。濁っていると、正邪の区別がつきにくくなるし、清潔すぎると、人を受け入れられなくなる。上に立つ人は、汚かったり、暗かったり、愚かであってはいけないが、かといって、細かいところまで口出しをすると、まわりも息苦しくなって、ついてこられなくなる」(巻第八 論刑第三十一 第四章)

「水清ければ魚棲まず」ということわざがあるが、あまりに心が清らかで、行いも正しく潔白すぎる人は、逆に、他人から敬遠されて孤立してしまうのだ。「人間には、キレイな面も、汚れた面も、両方ある」ということを忘れてはいけない。「人間はちょぼちょぼであり、どんな人間にも欠点がある」ということがわからない人が上に立つと、思いやりを欠き、まわりは息苦しくなってしまうばかりである。

◎「ぐっすり寝る」「しっかり寝かせる」
寝るとは、睡眠を取ること。寝かせるとは、時間をおくこと。
大惨事に見舞われたときなどの緊急事態では、一般にリーダーは「不眠不休で対処する」のが正しいと思われていますが、大惨事のときこそ、むしろぐっすり寝て、しっかり食べて、体調を整えるべき。人間は、ただでさえ、それほど賢くはない。賢くない人間が疲れた状態で指揮を執れば、さらに能力が低下しているので、判断を誤る。それこそ大惨事だ。

◎「思いつきの指示」は部下に必ず見抜かれる
指示を出す前に、「誰に、何を、どのような優先順位で任せるか」について、よくよく熟慮を重ねなければならない

◎人物を大きくする三要素
人の成長には「読書」「文章」「人との交流」が不可欠。

読書とは、歴史から学ぶこと。文章とは、文章を書くことで、自分の考えや情報を整理できること。人との交流は、裸の王様にならないように、苦言を呈してくれる人をそばに置いておくこと。「小人閑居して不善をなす」ということわざがある。「つまらない人間が暇でいると、ろくなことを考えない」の意味。

仕事の時間内は部下を忙しくさせるのが、上司の愛情と考えている。つまり、ひとりぽつんと机に座っているような職員をつくらないことだ。忙しく働かせると、部下の不平不満を助長すると思われがちだが、むしろその逆。やることがなく暇な職員ほど、不満を口にする。

◎困難に遭ってはじめて、その人の真価がわかる
太宗は、次のような詩を詠んでいる。「疾風(しっぷう)、勁草(けいそう)を知り、板蕩(はんとう)、誠臣を識る」(巻第五 論忠義第十四 第六章)
疾風は、激しく吹く風。勁草は強い草。板蕩は乱世。誠臣は忠誠心のある家臣のこと。「風が吹けば草はなびくが、強い草は風にもなびかない。それと同じで、その人の真偽は、世の中が平和なときはわからない。天下が乱れたときにこそ、その人の忠誠心がわかる」ということ。

「まさかのときの友こそ、真の友」ということわざのとおり、苦しい状況のとき、手を差し伸べてくれる人こそ、信頼に値する。「何も問題がなく、仕事が上手くいっているときは、この会社にいる人はすべて優秀で、立派で、ジェントルマンである。ただし、上下の直属のラインになったり、利害が絡んで生きるか死ぬかのネゴシエーションをすることになると、必ずしもそうでないことがわかる」。困難に遭ってはじめて、その人間の本当の価値、本当の強さ、意志や信念の固さを見分けることができるのだ。

◎人を成長させる「適当な負荷」を見極める
「疾風(しっぷう)、勁草(けいそう)を知り、板蕩(はんとう)、誠臣を識る」
この詩に込められている本質的な意味は、「人を成長させようと思ったら、ある程度の負荷をかけなければだめだ」ということだと解釈できる。

名トレーナーと、そうでないトレーナーを分けるのは、観察する力の差。名トレーナーは、担当した選手のタイプをよく観察しているので、個人の特性に合わせて、負荷のかけ方を変えることができるのだ。
—(抜粋ここまで)

出典:座右の書『貞観政要』 中国古典に学ぶ「世界最高のリーダー論」出口治明・著(KADOKAWA)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321503000159/

アートにゃんこ
経営者は焦った時ほど、ひとつ呼吸をおいて昔の人の教えに学ぶことが大事だにゃ。